こんにちは保健師です!
冬の心筋梗塞(2022年1月)
心筋梗塞は、血液が詰まり心臓を動かしている筋肉の一部が死んでしまう(壊死する)病気です。暖かい屋内から気温の低い屋外に移動する時の急激な血圧上昇で心臓への負荷がかかることや、寒さによって心臓の血管が過剰に収縮する血流不全等により、冬は心筋梗塞による死亡件数が多くなる季節です。
類似した狭心症との違いは冠動脈の詰まり方です。心筋梗塞は動脈が塞がり血流が全くなくなってしまい、狭心症は動脈が狭くなり血流がある状態です。どちらも胸の痛みや圧迫感といった症状が出ますが、狭心症では数分から長くて15分程度と一時的ですが、心筋梗塞では30分以上継続し、安静にしていたり救急薬のニトログリセリンを服用したりしても治まらないのが特徴です。
起床時は心臓の動きを活発にする交感神経が働きだすため血圧が高くなりやすいため、防寒対策をしっかりするよう心がけて下さい。入浴時には急激な温度変化を避けられるよう、脱衣所とお風呂場を暖かくしてから衣服を脱ぐようにしましょう。お風呂の温度は38~40度が好ましく、42度以上は血圧が高くなりすぎるため危険です。浴槽に入る前にかけ湯をして、出る時はゆっくり立ち上がるよう意識して下さい。血液が濃縮されないよう、起床時・入浴前後や就寝時には、コップ1杯の水を飲む習慣が大切です。毎日の飲酒も高血圧を招くため、適量と週2回の休肝日を守りましょう。血液循環が乱れて大量の血液が全身に送られ、心臓の血流が減少し心臓への負担が大きくなるため、飲酒後の入浴は禁忌です。日頃からウォーキングなどの有酸素運動とスクワットなどの筋トレを組み合わせておこなって血流を良くするとともに、減塩や禁煙にも取り組みましょう。
片頭痛の解消(2021年12月)
日本人の約四千万人が慢性頭痛を有していると推定されています。その中でも片頭痛は、こめかみから目のあたりがズキンズキンと心臓の拍動に合わせるように痛みます。頭の片側だけが痛いとも限らず両側が痛むこともあり、頭痛以外に吐き気・嘔吐・下痢などの随伴症状が現れたり、光やにおい・音・気圧や温度の変化に対して敏感になることもあり、日常生活に支障が出る方もいます。
脳の血管が急激に拡張することで痛みがおこるのですが、その原因としては、過労や寝不足または寝過ぎによる肉体的ストレス、緊張などの精神的ストレスの他、血管拡張作用のあるポリフェノール等を含む赤ワイン、血管収縮作用のあるチラミンが多く含まれるチョコレートやココア、チーズなどを摂取すると、それが身体内から無くなった時に逆に血管が広がるため、片頭痛を引き起こすことがあります。
寝不足・寝過ぎ・疲労・空腹など身体のストレスを避け、質の良い睡眠の確保を心がけて下さい。誘発食品は控え、血管をリラックスさせる働きのあるマグネシウムを含むごま・ひじき・玄米・大豆製品・海藻類や、代謝を促進させるビタミンB2を含むうなぎ・レバー・カレイ・ほうれん草・納豆等を積極的に摂ることをお勧めします。
痛みが強い場合は、首の後ろを冷やすと効果があり、逆に入浴やマッサージは血管を拡張させ痛みが増すため避けた方が良いでしょう。拡張した血管を収縮させたり、血管の炎症を抑える治療薬や予防薬があり、また片頭痛と思っていても他の疾病による痛みの場合もありますので、かかりつけ医や脳神経内科、頭痛外来などを受診し、ご相談してください。受診時に、痛む場所や痛み始めた時期などを伝えられると診断や対処がスムーズになりますので、普段から記録をつけておきましょう。
世界糖尿病デー(2021年年11月)
糖尿病は、膵臓から出るインスリンというホルモンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖(血糖)が増えてしまう病気です。血糖の濃度(血糖値)が高いままで放置すると、血管が傷つき、全身の動脈硬化が促進され、心臓病・失明・腎不全・足の切断といった、より重い病気につながります。
世界の成人人口のおよそ9.3%となる4億6,300万人が抱える病気で、年間500万人以上が糖尿病の合併症が原因で亡くなっています。日本では、総人口の15%を超える約2,000万人の糖尿病患者および予備群がいると推定されています。また、治療を受けていない人の割合は、特に男性の40歳代の働き盛り世代で最も高く、約5割が未受診または治療中断という状況です。
世界糖尿病デーの11月14日は、インスリンを発見したカナダのバンティング博士の誕生日であり、糖尿病の予防や治療の啓発を呼びかけるキャンペーンを毎年おこなっています。青い丸をモチーフにしたブルーサークルが用いられていて、今年も東京タワーがブルーライトアップされました。
1型、2型などのタイプがありますが、日本人の約9割は生活習慣が大きく影響する2型糖尿病です。バランスの良い食事・30分程度の運動・ウエイトコントロール・禁煙に心がけましょう。特に、食事は野菜から食べることや、食後の有酸素運動などは血糖値の急激な上昇を防ぐ効果があります。
のどが渇く・残尿感・疲労感等の自覚症状が現れた時はかなり進行していることが多いため、毎年健診を受診し数値の変化を確認し、高血糖を指摘された場合は、かかりつけ医または糖尿病専門医への早期の受診が大切です。
帯状疱疹(2021年10月)
帯状疱疹は、水痘(水ぼうそう)と同じウイルスで起こる皮膚の病気です。多くは、幼少期に水痘に罹り、症状が治まってもウイルスは完全に除去されるわけではなく、神経細胞に残っているため、加齢・過労・ストレスなどの免疫力の低下より、身体内に潜んでいたウイルスが活性化し、帯状疱疹として発症します。夏バテのおこる夏から秋にかけて罹患率が高く、年代別では50歳を過ぎると千人当たり発症率は年間5.31人から8.41人で、80歳までに3人に1人が発症すると言われています。
症状としては、ピリピリ・チクチク・ズキズキといった神経痛が出て、1種間程度で痛みがある部位に赤い斑点が見られるようになります。患部を冷やさないようにし、痛みが強い場合はお風呂でしっかり温まると痛みは緩和されます。赤い斑点内に水ぶくれができ、水ぶくれが破れ最終的にかさぶたになり症状がおさまってきます。どの部位にも起こるのですが、上肢から胸背部、次いで腹背部、頭部・顔面の順に多くなっています。部位によっては、角膜炎、顔面神経麻痺、難聴、めまいなどの合併症をおこしたり、皮膚の症状が治った後も、神経が損傷されたことにより痛みが何か月も残ることもあるため、自然治癒を待たずに早めの受診が大切です。
再発を繰り返す方もいますが、水痘の既往のある方にはうつす危険はなく、一度も水痘に罹ったことのない方では、帯状疱疹ではなく水痘として発症します。
予防には、日頃の体調管理が大切です。バランスのとれた食事・十分な睡眠・適度な運動などにより、免疫力アップを心がけましょう。50歳以上の方はワクチンが接種できます。1回の接種ですむ生ワクチンの皮下注射と、2か月の間隔をあけて2回筋肉注射をおこなう不活化ワクチンがあるため、かかりつけ医にご相談ください。
骨粗鬆症予防(2021年9月)
骨粗鬆症とは、骨量が減り骨の強度が低下することにより骨折しやすくなる病気です。身体の中の骨は生きていて、新たに作られる骨形成と溶かして壊される骨吸収を繰り返していますが、このバランスが崩れることで骨がスカスカになってきます。女性ホルモンの減少や加齢と関係があり、女性に多い病気です。痛みがないので気が付きにくく、つまずいたり、くしゃみなどのわずかな衝撃で、背骨(脊椎圧迫骨折)・手首(橈骨遠位端骨折)・太ももの付け根(大腿骨頚部骨折)などに起こりやすいと言われています。1か所骨折するとその周辺の骨にも負担がかかり、連鎖的な骨折につながりやすくなるため注意が必要です。背中が丸くなったり、身長が縮んだりするのは、身体の重みで押しつぶされる脊椎圧迫骨折による骨粗鬆症が原因のことが多いです。
骨の健康のためには、乳製品や大豆製品・小魚などに含まれるカルシウムが重要ですが、それにプラスして、カルシウムの吸収を促進する鮭や秋刀魚・カレイなどに含まれるビタミンDやほうれん草・小松菜・ブロッコリー・キャベツなどの緑黄色野菜に含まれるビタミンKなど、エネルギーと栄養素を過不足なく摂取することが大切です。
冬場なら30~1時間の日光浴、夏場ならば30分程度木陰で過ごしたりして、紫外線を浴びることでもビタミンDは身体内でつくられます。負荷がかかると骨を造る細胞が活発になるため、階段の上り下りやウォーキング、筋肉トレーニングなども効果的です。また、40歳を過ぎたら定期的に骨密度検診を受診し、骨量測定でご自分の体調を知っておくと安心です。
認知症予防の食事(2021年8月)
認知症は大きく分けてアルツハイマー型と脳血管性の2種類があります。認知症の約60%を占めるアルツハイマー型は脳内にアミロイドβ(ベータ)という異常たんぱく質が蓄積することで脳細胞が破壊され、認知機能が低下していきます。発症には、抗酸化物質の不足、塩分や脂肪の摂りすぎ、ミネラル不足等の食生活の偏りが大きく関与しています。塩分や脂肪(コレステロール)は血管を傷つけ動脈硬化を促進させ、抗酸化物質不足は活性酸素(物質を酸化させる化合物)が増えて新陳代謝が滞ることで老化が進むと言われています。
バランスの良い三度の食事の中でも積極的に摂るよう心がけてほしい食材は、青魚・野菜・果物・大豆製品等です。青魚にはDHA(ドコサヘキサンエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)が豊富に含まれ、悪玉コレステロールを減らし血液をサラサラにする効果があります。青魚の他には、鰻や鮪のトロ、真鯛などもお勧めです。赤ピーマンや柿に含まれるビタミンC、かぼちゃやホウレン草に含まれているビタミンE、茄子や生姜、ぶどうに含まれるポリフェノール、トマトやスイカ、パプリカ等に含まれるリコピンなどは抗酸化作用があります。視覚や聴覚から得た情報をスムーズに脳に伝える神経伝達物質を生み出すレシチンという脂質が不足すると記憶力の低下を引き起こすため、レシチンを多く含む納豆や豆腐などの大豆製品もしっかり摂りましょう。
また、有酸素運動によって酸素が脳の血管に送り込まれると脳内の血液が豊富になりニューロンという脳の神経細胞が新しく作られます。少し息が上がるくらいの速さのウォーキングを10分程度するだけで認知機能が向上するため、毎日継続すると効果的です。
夏バテ予防の運動(2021年07月)
夏バテとは、身体がだるい・食欲がない・疲れやすい・寝不足などの夏の暑さによる体調不良の総称のことです。発汗による水分やミネラルの不足、食欲の低下による栄養不足、気温の変化への対応力低下による自律神経不調など原因は様々です。病名はなく、治療が必要な場合は個々にあらわれた症状に対する対症療法となります。
栄養バランスの良い食事が基本ですが、炭水化物を効率よくエネルギーに変えるビタミンBを多く含む魚介類や豆類・乳製品を意識して摂りましょう。冷や奴や豚肉の冷しゃぶ等の良質のたんぱく質も補給してください。
ストレッチや筋トレの要素が入っているラジオ体操は全身をほぐし血行や代謝が良くなります。朝のラジオ体操は、寝ているときに優位に働く副交感神経から活動時に働く交感神経への切り替えがスムーズになり、自律神経のリズムとバランスが整いやすくなります。
セロトニンの分泌を促し自律神経が適正に働くようになるため、太ももやお尻周りの大きな筋肉を鍛えることも効果的です。軽い力でゆっくり動かすと実際よりも重い負荷がかかったようになるため筋肉の発達につながります。スクワットや階段1段飛ばし昇りなど呼吸をしながらゆっくり5~10回繰り返せるくらいの負荷の運動を1日10分程度、1週間に2~3回行うよう習慣化しましょう。体幹が鍛えられるお腹周りの筋トレである腹筋は、上体を全て起こす必要はなく臍を見るように肩が少し上がる程度を5回おこなうことで十分です。お腹や足先を温めておくと質の良い睡眠が得られ疲労解消につながるため、就寝前のストレッチもお勧めです。
夏の脳梗塞(2021年6月)
脳梗塞は、脳の血管が細くなったり血管が詰まることにより酸素や栄養素が送られなくなるため、脳の細胞が障害を受ける病気です。細い動脈が狭くなり血管が詰まるラクナ梗塞、太い血管が狭くなり血栓が付着し詰まるアテローム脳梗塞、心臓でできた血栓が血管内を流れ、脳の血管が細くなったところで詰まる心原性脳梗塞と、詰まる血管の太さや詰まり方によって3つのタイプに分けられます。症状やその程度は障害を受けた場所と範囲によって異なります。
夏は大量の汗をかくため身体が脱水状態になると、血液中の水分が不足して血液が粘度を増して血栓が出来やすくなります。ラクナ梗塞やアテローム梗塞は脱水を契機とし発症することが多いため、暑い季節には特に注意が必要です。脱水以外でも疲労や減量などによる体調の変化が引き金となり、高齢者だけでなく若い年代の方でも発症することがあります。脱力感やしびれ、ろれつがまわらない等の初期症状は、熱中症の症状と似ていて、様子をみていると発見が遅れ重症化することもあるため、早期受診を心がけてください。
水分を摂取してもすぐに血液の流れがよくなるわけではなく、身体全体に浸透するのに15~20分程度かかります。汗をかいていなくても、エアコンによる乾燥やアルコールによる利尿作用などでも脱水を招くため、早めにこまめに水分補給をおこない、規則正しい生活の習慣化が大切です。また、起床時には血圧が上昇するため、就寝前と起床時にコップ1杯の水を飲む習慣をもちましょう。血圧が高めの方や動脈硬化の疑いのある場合は、あと2杯多く水を飲むことと、夏でも適切な減塩が基本と言われていますので、かかりつけ医とよくご相談して下さい。
新型コロナワクチン(2021年5月)
従来のワクチンは、弱毒ウイルスまたは生ウイルスの抗原(生体に免疫応答を引き起こす物質)を接種して、身体内で抗体(抗原を体外へ排除するために作られる免疫)を誘発させるものでした。ワクチンを接種しているとすでに同じ抗原が身体内に入っているために、すぐに反応して抗体をつくり、感染防止や重症化予防の効果がでます。新型コロナウイルスのワクチンは遺伝子ワクチンで、遺伝子を接種することで身体内で抗原をつくらせ、それに対する抗体を獲得するという方法です。
通常は3週間の間隔で2回接種します。最も発症予防効果が得られるのは、2回目を接種してから7日程度経ってからです。肩に近い三角筋に筋肉注射をしますが、腫れや痛みなどの副反応があらわれることがあるため、利き腕の逆側に接種し、2回目も同じ側の腕に接種するのが通常です。ただし、副反応が強くでた場合は、反対の腕に接種する場合もあります。2回接種の間隔が長くあいてしまった場合は問題ありませんが、日にちをあけずに接種した場合は2回目を接種しなおすことがありますのでご注意ください。発症予防効果は90%近く、感染拡大防止につながると言われています。新型コロナウイルスに既に感染した場合は、感染直後は再感染しにくいため、数か月は接種を延期してもかまいません。
副作用には、接種部位の腫れや痛みの他、倦怠感や発熱が接種者の約10%に出現し、アレルギー反応がでる場合もありますが、発症予防効果は高いため、お住いの市区町村から接種のご案内が届きますので、かかりつけ医と相談しワクチン接種について検討しておいてください。ただし、ワクチン接種後も感染の可能性はゼロではないため、マスクの装着や手指消毒、密を避ける生活は継続するよう心がけましょう。
悪玉コレステロールを下げるには(2021年4月)
LDL(悪玉)コレステロール、HDL(善玉)コレステロール、中性脂肪などの血中脂質は、たんぱく質と結合して血液中に溶け込み、エネルギー源として全身に運搬されています。LDLコレステロールは、ホルモン生産や細胞膜の形成など大切な役割をしていますが、血中に多く存在すると血管壁に沈着・蓄積し、炎症反応を起こして血管の内壁を傷つけ心筋梗塞や脳梗塞等の誘因となります。対照的にHDLコレステロールは、組織に沈着したコレステロールの除去、抗酸化作用、血栓予防等の動脈硬化を防ぐ働きをしています。
脂質異常症(高脂血症)には遺伝的要因、生活環境や女性ホルモンとの関連などが挙げられますが、特に食生活は密接な関係があると言われています。腹八分目のバランスの良い食事が基本です。一日三度の食事の中で肉類よりも魚や大豆製品のおかずを摂るよう心がけ、お肉を食べる時は、高脂肪のバラ肉やひき肉は避け、低脂肪高たんぱく質のもも肉や鶏のむね肉などがお勧めです。野菜、海藻、きのこ類などの食物繊維の多い食品を、ゆで野菜なら片手に一杯、生野菜なら両手に山盛り一杯分を毎食しっかり摂りましょう。油は炒めたり揚げたりする目に見える油だけでなく、食品に含まれている目に見えない油脂(カレールーや菓子、パン類)にも注意し、調理油としては1日大さじ1~2杯が適量です。
運動は一度にまとめて実施する必要はなく、1日の中であわせて30分程度の有酸素運動を週3回以上おこなうと、代謝があがり筋力アップと脂肪の燃焼につながります。また、毎年健診を受診し、年齢とともに高くなりがちなLDLコレステロール値を確認しておくと安心です。